譲介は一也とは違うデリカシーのなさだから(人を煽るためにわざとと言う面も大きい)、麻純さんが亡くなった場にいたのは、多分一也にとってもK先生にとっても幸いだった(幸いと言う言い方はアレだけど)なあと、突然思った。アレで、人伝に、一也のお母さんが亡くなったって言う話だけ聞いたら、あいつのことだから絶対どこかで一也に対していつまでウジウジしてんだこの軟弱野郎とかって言って一也をマジ切れさせてたろうし、一也が切れる前に、多分K先生から平手食らってたと思う。あの場にいて、麻純さんと個人的に話もして(ちょっとだけど)、そういう過程があってのあの現場で、親に捨てられた譲介には、「親に死なれる」と言う感覚は言葉にされても理解しにくいだろうし、だからああやって、全部目の当たりにして、宮坂さんが泣くのに一緒にいて、ちゃんと悲しみを共有する輪の中に譲介がいたと言うのは、案外譲介にとってものすごく意味深いことじゃなかったのかと言う気がする。
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