戦場で看取った人間たちの、できれば墓を作って、分かれば家族のところへ遺品を届けに行くキリコ。家族も散り散りばらばらで、遺品を届けられないこともしばしば。無理と思った時には、遺品は焼いて灰を海とか川とか丘とかで撒く。ある時出会ったクエント人の傭兵のために、出身と言う村まで訪ねてゆく。クエント人以外とは滅多と交流しない彼らは、キリコの話をまったく聞こうとはせず、家族をなかなか見つけられない。たまたま知り合ったシャッコが、クエント人は家族と言う感覚がまったくないので、遺品なんか持って来ても何のことかよく分からないのだと言われる。それでも、ここまで来たからと、シャッコの手引きで何とか村へ入り、死んだ傭兵と血の繋がりのある人間と会う。あくまで怪訝そうな相手に、とにかくも遺品を渡して去ろうとするキリコ。遅いからひと晩くらい休んで行けって言うシャッコ。食事をしながら話をするふたり。遺品と言う物を何とかキリコ的に理解しようとするシャッコ。「もし戦場で、隣りにいた奴が死んでもおれには何も関係がない」と、恬淡と言うシャッコ。キリコは説明を諦めて、「おまえには無関係でも、おれはそうは思わない。それだけのことだ」とだけ言う。翌日発とうとするキリコに、「おれとおまえが戦場で出会って、おれが死んだら、おまえはおれの遺品を持ってこの村へ戻って来るのか」ってシャッコが訊く。間を置いて、ああってうなずくキリコ。さらに間を置いて、「おまえが死んだ時は、誰が遺品を、どこに届けるんだ」って訊くと、キリコははっとした顔をしてから、「・・・さあな」って答える。シャッコは、「おれが死んだら、おれの遺品はおまえ宛だ。おまえが死んだら、おれが受け取ろう」って言う。ふたりはそれで互いに微笑み合って、じゃあなって別れる。手は振っても振り向かないキリコを、姿が見えなくなるまで見送るシャッコ。
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