そうか、シェーンコップ先生にとって、リューネブルグ氏は父親殺しだったんだなあ。祖国を捨てた(亡命は彼の意志じゃなかったけど)ことでの父親殺し、親と離れたことでの父親殺し、元隊長を殺すことでの父親殺し、その果てに、殺さない父親として選んだのがヤンさんだったのか。そしてヤンさんは、徹底的に父親殺しを拒んだ人なんだよなあ。まあ、男性の描く物語は大体親殺しが根底にあると思って間違いないけど、銀英伝もその流れで、ヤンさんはしかし父親殺しをしない人なんだよな。あの中でのヤンさんの特異性ってのはそういうところもあるのかもな。ロイ氏も、父親関連の物語の中で、唯一くらいに母殺し(ができずにこじらせた)にこだわると言う辺りで、別の意味で特異であるので、ロイ氏はあの中での、隠れ主人公と言えるかもなと思った。そうか、シェーンコップ先生がヤンさんに独裁者になれ、と執拗に迫ってたのは、「そうしたらまた、馴染みの、父親殺しができるから」と言うことだったのか。そしてヤンさんは独裁者なんかになるわけもなく、シェーンコップ先生の、コンプレックス丸出しの父親殺しに引っ掛からずに、殺されずにすんだ=忠誠を尽くされた、と言うことか。もしかすると、シェーンコップ先生のそういうコンプレックスに、ヤンさんは無意識に気づいてたのかもなあ。絶対に独裁者にならないのが、自分の意志であると同時に、ヤンさんにできる、最上級の、シェーンコップ先生への優しさ(注がれる愛情への応え方)だったのかも。
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