キリコがキリコたる所以として、キリコには思想がない、と言うのは絶対に外せないと思う。キリコの中にあるのは、フィアナに対する執着(両人的には愛)だけ。そういう部分で、キリコは恐ろしく普通の平凡なただの青年(この間まで少年でした)でしかない。それが、ボトムズと言う物語にものすごい深い陰影を与えてるんだよなあ。キリコがただの兵士である(凡人と言う意味合いで)と言うことと、スコタコが使い捨てにされる量産機であると言うことはあの中で見事に重なるし、キリコが何の思い入れもなく乗り捨てにするスコタコは、戦争の中での、キリコ自身の在り方でもある。そこで、キリコが(モデルとしての)スコタコにやたらこだわる、と言うのが生きるんだよなあ。キリコはヒーローの素質はまったくない主人公で、ボトムズには創造主たる神と、その地位が欲しくて仕方がない面々はいるけど、世界を良くしようとするヒーローはいない。例外はポタリアとカン・ジェルマンかなあ。ヒーローたる素質は物語の途中で消えて、凡人のキリコと神と野心家が残る。そこからさらに、キリコが生き残る。異能者設定を凡人呼ばわりはまあどうかなと思うけど、それ以外の部分ではキリコはごくごく普通の青年だしなあ。その、普通の人であるキリコ、と言う部分がブレなかったあの最後は見事だなあと思う。
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